第6章 〜6〜
その頃、いきなり馬に乗せられた私は焦っていた。
「ちょっと!危ない!」
「落ちて怪我したくなかったら、俺に掴まれ」
(そんな事言われても…馬なんて初めて乗ったし……)
不安そうな私に気がついたのか、政宗は片腕で私を抱き寄せた。その拍子に私の腕が政宗の背中に回った。
「舌噛みたくなかったら、大人しくそうしてろ」
「……(近いし!)」
目の前に広がる胸板に恥ずかしくなり、下を向いて大人しく抱き着いたままいると、あっという間にさっきいた本能寺が見えてきた。
「あ……(本能寺が……ない………)」
「燃え尽きたようだな……」
(ほんとに私が連れ出さなかったら……あの人死んでたかも……気を失ってたのか動かなかったし……)
私はあの時力づくで男を担ぎあげ、連れて逃げ出した自分の判断が間違ってなかったとあらためて感じ、心底ほっとした。