第6章 〜6〜
政宗は馬を止め、先に私を地上へと下ろした。
その瞬間、足が震え私は立っていられず地面にへたりこんだ。
(……馬、怖かった……)
「おい、大丈夫か」
「……大丈夫……ただ、馬に乗るの初めてだったから…………」
(まさか、馬にも乗ったことがないなんてな……)
そう思いながら政宗は私を横抱きにした。
「ちょ、降ろして!」
「駄目だ。どうせまだ立てないだろ?」
「そうだけど……」
「大人しく運ばれとけ 」
「う……(恥ずかしいんだって……)」
そうして政宗は、信長が居るであろう燃え尽きた本能寺から少し離れた所にある野営へと向かう。
「あぁ、そうだ」
政宗は野営の手前で足を止め、私に顔を向けた。
(?)
「お前、名はなんて言うんだ?」
「……え?」
「ずっとバタバタして、秀吉の奴すらもお前の名前を聞くのをすっかり忘れてたろ。……なんだ?、名前もわかんねーのか?」
(そう言われてみればそうなんだけど……なんだろう……すっごく馬鹿にされてる気がする……)
「…………」
「ん?」
「………………です……」
「か。いい名前だ。」
そう言って政宗はスッキリとした表情で微笑んだ。
「……(なんでそんな顔するの……??)」
私はわけも分からず、急に向けられた笑顔に戸惑い、頬が熱くなる感覚がした。
(そしてなんで私は照れてるの……?そんな場合じゃないのに……!!!)
顔を伏せた私をみて、政宗はまた口角上げて微笑んだ。
(誰よりも先に女の名前を聞けて、柄にもなく嬉しい、なんてな。俺もまだまだ青いな。)
そうして上がった口角を戻しつつ、政宗は野営へと入っていった。