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イケメン戦国〜未来を夢見る〜

第32章 〜32〜







女が泣き止むのを城が見える少し離れた所で並んで座って待った。
女は、少しだけすっきりとした顔で恥ずかしそうに俯いた。


「申し訳ありません……泣いたりして……」

「いいんだ。落ち着いたか?」

「はい……」

「そうか。では……まずお前、名は何というんだ?」

「……私は、優鞠と申します」

「優鞠か、いい名だな」

「ありがとうございます……」


少しだけ柔らかく微笑んだ優鞠が、ぽつりぽつりと話し出した。


元は織田軍の傘下の武将の娘だったこと。

織田軍の戦へ参戦した父親が命を落とし、それを苦に母親が自ら命を絶ったこと。

天涯孤独となり、さ迷っているうちにあの大名の元で女中として働く事になったこと。

父親の変わりにと、大名が織田軍へと取り入る為の道具に扱われたこと。

そのせいで、女中仲間達からも手酷い仕打ちを受けていたこと。




話を聞くと、あの大名への怒りが湧いてきて、行き場のない怒りを拳で握り潰した。


(それにしてもこいつの父親は織田軍の傘下だったのか……)



「……確に色々ありました。でも、城が崩れていくのを見ると、久しぶりに気持ちが晴れました。」

「そうか……」

「私は……大名や女中仲間に酷く扱われても、あまり辛いとか嫌だとか感じていませんでした。なんて馬鹿な人達なんだろうと、心のそこでは彼らの事を蔑んでた。でも、自分であの場所を抜け出す勇気がなかった。逃げ出しても、その先幸せになんてなれないって、諦めてたんです」

「……そうか」

「でも、今、崩れていく城を見てると、これから何でも自分には出来るんじゃないかって思うんです。心に巻き付いてた縄が解けたみたいな……不思議な気持ちです……」


優鞠はそう言うと、向き合った俺に深々と頭を下げた。


「秀吉様……ありがとうございます」

「ん?」

「話を聞いてくださって、ありがとうございます。改めて振り返って、尚決心がついたように思います。」

「…………」

「逃げ出しても無意味だと思ってたのが嘘みたいに、今は心が清々しいです。……まあ、この先のこと色々考えなければなりませんが……」


「優鞠……」

「はい?」


首をかしげて優鞠は俺を見た。




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