第31章 〜31〜
三成くんと別れ、部屋へ戻った。
襖を開けると優鞠が着物を縫っていた。
「あ、優鞠」
「……」
「昨日、夜会わなかったね。何かあった?」
「あ、集会に出てたの。それで、結構遅くなっちゃったから、寝てるかと思って……今朝も先輩に捕まっちゃって……」
「そっか」
「ごめんね」
「謝ることないよ。それより……」
「?」
私は優鞠の隣に座りながら恐る恐る言った。
「家康とのこと……少し聞いたよ?」
「……うそ」
「家康本人にね」
「そっか……」
「大丈夫?」
「……大丈夫……ではない……」
「だよね。聞いた時から心配してたの。」
「……」
「私が思うに、優鞠は……今は誰とも恋愛するつもり無いだろうなって思ってて……家康に好きだって言われて戸惑ってるんじゃないかなって。」
「なんで分かるの……」
「ふふ、勘かな?」
「……どうしたらいいと思う……?」
「優鞠は……家康に気持ち伝えられてどう思った?」
「一言でいうと……すごい困ってる」
「困ってる……ねぇ。」
「……おかしいかな……」
「おかしくはないよ。でも、嬉しくなかった?」
「……そりゃ……嬉しいけど……」
「秀吉さんの事が気になる?」
「……秀吉さんはね……自分なりに考えてみたけど……やっぱり普通の好きな気持ちとは違うかもしれない」
「?」
「そりゃ、好きだよ?でも、本当に恋仲になりたいとは思わないの。」
「へぇ……」
「ただ……助けて貰って、織田家の女中として働かせてくれた事をもう1度ちゃんとお礼が言いたいの。」
「感謝……ってこと?」
「うん。秀吉さんとどうこうなりたいとかじゃなくて、すごい人だなっていう憧れというか……」
「憧れねぇ……」
「そう。だから多分ちゃんとお礼が言えれば私は充分なの。」
「そっか。」
「うん。だから、明日にでもちゃんとお礼言いに行こうと思ってる。」
そう言い切った優鞠は迷いのない顔をしていたので私は安心した。