第29章 〜29〜
「……そんな怯えた顔するな」
政宗はそう言うと私を優しく抱きしめた。
「怯えてないよ……政宗は怖くないもん……」
「確かに俺は我慢してる。いつだってお前を抱きたいと思ってる。」
「……(嬉しいんだけど言葉がストレート過ぎる……)」
「でも、お前が嫌ならいつまででも待つ。」
「……え?」
「お前を大事にしたい。心も身体も。お前が本当に嫌な事はしたくない」
「……うん……(嫌なわけない……でも、心の準備が……)」
私を気遣う政宗の顔を見ると、無性に泣きたくなってきた。
泣いたって困らせるだけなのに。
自分がとても自分勝手な気がして、目が潤むのを感じた。
顔を見られるのが嫌で、政宗の胸にぎゅっと抱きついた。
「あのね……嫌な訳じゃないの」
「……ああ。」
「ただね……少しだけ……怖いの」
「…………」
「あ、政宗がじゃなくて、自分がね」
「自分が?」
「そう。なんか、この時代に来てから、色々な事が前と違って……」
「ああ」
「政宗と付き合えたことは私にとってすごい幸せなの……。でも……本当に好きな人と……そういうことした事ないから……自分がなんか……おかしくなっちゃいそうで……」
「……ふ、馬鹿かお前は」
「……馬鹿でもいいよ」
「顔上げろ」
私が恐る恐る顔を上げた途端口付けされた。
「んっ…………」
舌を絡めとられ、うまく呼吸が出来ずに政宗の着物をにぎりしめた。
(頭……クラクラする……)
名残惜しそうに唇が離れたと同時に頬を撫でられた。