第29章 〜29〜
「ちょ、政宗、誰か来るよ……」
「ったく」
政宗は私の身体を離すと、腕を掴んで素早く襖を開けて近くの部屋の中に滑り込んだ。
「???」
私が驚いて政宗を見上げると、真剣な顔で見つめられてうまく息が出来なくなった。
「ま、まさむ……ね?」
「お前、あんまり俺を煽るな」
「煽ってなんか……」
私がそういうのと同時に、政宗の長い指が唇に触れられて言葉が止まる。
(……これ、やばい感じ……)
頭が湧いたように熱くなり何も考えられず、無意識に政宗の腰の辺の着物を掴んだ。
それに気がついた政宗が柔らかく笑った。
「こういう事を言ってんだよ」
「……えぇ?」
「俺が我慢してるって分かってやってるのか?」
「が、我慢って……」
「俺は……お前が欲しい」
「……(欲しいって……)」
その言葉の意味が分からないほど子供ではない。
それに、そういう経験が初めてな訳では無い。
ドキドキしすぎておかしくなりそうだった。
熱い視線に真っ直ぐに見つめられて、ますます頭が回らず身体が固まった用に動かなくなった気がした。