第29章 〜29〜
廊下を政宗と手繋いで歩いていると、すれ違う人達の目線が痛く刺さるのを感じた。
(流石に恥ずかしい……でも……言ったら離されちゃうかな……)
曲がり角の手前で私が不意に握った手に力を込めると、政宗が立ち止まった。
「どうかしたか?」
「あ、ううん。なんでもない。」
「なんでもないって顔してないけどな」
政宗は空いている方の手で私の頬を軽く撫でた。
「っ……。手……」
「手?」
「恥ずかしいなって……でも……」
「でも?」
政宗は親指で私の唇を撫でた。
「……離したく……ないなぁって……」
私がそう言って顔を俯かせると、繋いでいた手を引かれて、気がつくと政宗に抱きしめられていた。
「……ちょっと、こんな所で……」
「お前が可愛いこと言うのが悪い」
「…………」
私がにも言えずに居ると、曲がり角の向こうから人が来る気配がした。