第29章 〜29〜
「午後に仕事が無ければ俺も行くんだがな」
「ん?」
「光秀の所」
「……ありがとう。でも大丈夫だよ。秀吉さんが一緒に来てくれるって」
「秀吉が?」
「うん。光秀さんに呼ばれてる事話したら、心配だから俺も付き添うって」
「付き添うって保護者かあいつは」
「ふふ、お兄ちゃんだからね」
「は?」
「秀吉さんがね、私の兄替わりになるって言ってくれたの」
「ほぉ……(嬉しそうだな)」
「ほら、私お兄ちゃん小さい頃に亡くしてるって言ったでしょ?だからだと思う。秀吉さん優しいから」
「世話焼くのが趣味みたいなもんだからな、秀吉は」
「ふふ。だから心配しないで?」
「ああ。(ほんとに気持ちが兄弟愛ならな)」
政宗がそんなことを考えていると事など露知らず、私は食事を終えると立ち上がり食器を下げに向かった。
(あいつは……よくまぁ色んな男に好かれるな……兄弟愛にまで妬く気はねぇが……)
政宗の元へ戻ると、頬杖を付いて何か考え事をしているようだった。
「どうかした?」
「ん、いや何でもねぇ。(変にこいつを縛り付けるのもな。とりあえず秀吉の様子を見てからだな)」
政宗は立ち上がると私に手を差し出した。
「?」
「いくぞ。秀吉の所まで送ってやる」
「……ふふ、ありがとう」
私が手を取ると、政宗はゆっくり歩き出した。