第29章 〜29〜
「あ……」
「おう、」
政宗は私に気づき、自分の隣へ呼び寄せた。
政宗につられて家康が振り向くと、途端に嫌そうな顔をした。
(?)
疑問に思いながらも政宗の隣に座る。
(家康……昨日に引き続き不機嫌なのかな……謝った方がいいよね……)
そう考えていると、家康は自分の隣に座った三成の方を向いて言った。
「なんで俺の隣に座るの」
「昼餉を取ろうと思いまして」
「別に俺の隣座らなくてもいいでしょ」
「何故ですか?」
「はぁ……」
(……なんだ、私にじゃなくて三成くんにか……)
少しほっとしながらも、家康を宥めようとは声をかけた。
「……ごめん、家康。私がこっち側に座っちゃったから……三成くん、席変えない?」
私がそう言うと、政宗に腕を掴まれた。
「駄目だ。お前はここでいい」
「え……でも……」
「こいつらのことは気にしなくていい。いつだってこうだからな。」
「そうなの?」
私が家康を見ると、溜息を付いた。
「別に。三成が俺の言う事を理解してくれないから」
「家康様、どういうことでしょう?」
三成くんはぽかんとした顔で家康を見ている。
(……家康の気持ちも何となくわかるような……)
頭に疑問符が浮いている三成くんを見ながら、ふとそう思ってしまった。
(軍事や仕事に関しては鋭く物事を考えられるけど、その他の事は天然というか……ちょっと話通じないというか……そんな三成くんも、それにいちいち怒る家康もまあ、なんかちょっと可愛いけど)
1人で微笑んでいると、政宗に話しかけられた。
「なに1人でニヤついてんだ?」
「いや……2人ともなんか可愛いなぁって」
「ふ、お前より年下だからな」
政宗との話が聞こえたのか家康がぶっきらぼうに言う。
「可愛いとかやめてくれる」
「ごめん。もう言わないから」
ムスッとしている家康を宥めながら、女中さんが運んできてくれた食事を食べ始める。