第5章 〜5〜
「信長様、女が逃げました。今政宗が馬で追いかけています。すぐ私も後を追います。」
「ふっ、逃げるとはな。やはりあの女、愉快だ」
「必ず捕まえて参ります。暫しお待ちください。」
「あぁ」
秀吉は、信長の手当を済まし隣で話を聞いていた家康に声を掛けた。
「家康、お前も手伝え」
「なんで俺が」
「人数は多い方が良いだろ?」
「顔、良く見てないし。」
「顔を見なくともわかる。あの女の格好見ただろ?」
「……はぁ。分かりましたよ。」
「俺は森の東側から追う。お前は村の手前から川沿いに走れ」
「……承知。」
嫌々承諾した家康は秀吉が走り出したのを見てため息を洩らした。
そして馬にまたがり、言われた方向へと走り出した。
(なんで俺まで変な女を探さなきゃいけないわけ)
そう心の中で愚痴りながら家康は村の入口に到着した。
そこから馬を歩かせ川沿いをいく。
(どうせ先に出た政宗さんが見つけてるだろうし、頃合いを見て戻ろう。)
そう考えながらゆっくりと進んでいったその時。
川沿いの草むらに立っている人影を見つけた。
(……ん?あそこに居るの、もしかしてあの女……?)
ゆっくり近付いて行くと、先程本能寺からお館様を担いで出てきた女がそこに居た。
(……なんで最後に出た俺が見つけちゃうんだよ……)
「はぁ……」
大きなため息を洩らし、女に近づく。