第27章 〜27〜
家康の考えが分からず、疑問に感じながらお茶を飲んでいると、家康が袖裏から包みを差し出した。
受け取って、そっと包みを開くと簪だった。
とても綺麗な色で、先には菊の花が付いていた。
自分の名前にも付くその花は美しくてずっと好きだった。
家康も菊の花を見て自分を思い出してくれたのかと思うと、少し照れくさくもあり嬉しくもあった。
でも、贈り物をもらうなんて申し訳ないと言うと、
「返されても困る」と押し切られてしまい、有難く頂く事にした。
簪を胸にそっと抱いてお礼を言ったが、改めて考えてみると簪を使える日は少なく、素直にそう言うと、家康は名案を思いついたという笑顔で言った。
「今度それ付けて出掛けよう」
誘いは素直に嬉しかった。
でも、本当に出掛けたりしたら……流石に女中仲間が黙ってないだろうな……と思いながらも、家康を怒らせたくなくて笑いながら曖昧に返事を返すと、ぐいっと腕を掴まれた。
「なんでそんな悲しそうに笑うの」
最初、言われても意味がわからなかった。
(悲しそうにだなんて、そんなつもり無いんだけど……)
そう思っていると、誘われて困るのか、嫌なのかと聞かれて、咄嗟に嫌じゃないと言っていた。
確かに困りはするが、決して嫌ではなかった。
嬉しいと思う反面、周りの目を気にしてしまう自分がとても嫌だった。