第27章 〜27〜
こうなったら、正直に気持ちを言おうと思った。
友達になんてもう戻れない。
曖昧な関係を続けるより、少し前の関係に戻ればいいだけだ。
今ならまだ戻れる。
そう思って伝えようとすると、家康はどこか吹っ切れたような顔で言った。
「それはもういいよ」
どういう事かと聞こうとしたら、腕を引っ張られ気がつくと家康の胸に抱かれていた。
意味が分からず何も言えずにいると、まさかの言葉が降ってきて身体が固まるのがわかった。
「もう友達になってなんて言わない」
(なんで…………)
そう自分も願っていたはずなのに、家康から言われると傷ついている自分がいた。
「好きだよ……多分子供の頃から……」
「嘘……」
(……今……好きって言った……?)
「嘘で俺がこんなこと言うと思う?」
「思わない……」
子供の頃も、また話が出来るようになってからも、その間の印象でも、家康がそういう大事なことを冗談半分で言うような人ではないことは分かっている。
でも、だからと言ってすぐに信じられる様な言葉ではなかった。
(家康が……私のこと……)
上手く頭が回らず、どうしようかと思っていると、肩を起こされて家康と目が合った。
「友達より困るって顔してる」
家康が私の顔を見て、小さく笑いながら言った。
小さく名前を呼ぶと、家康は微笑みながら「ごめんね」と言った。
(謝って欲しい訳じゃないのに……。)
そうさせてしまった自分に腹がたった。
家康は私に子供の時のように笑ってほしいと言う。
今の私の笑顔ではなく……子供の時のように……
正直、あれから色々ありすぎて、素直に笑うことなんて少なかったと思う。
また、何も考えず笑える日が来るのかな……
そうなればいいなと心で願った。