第4章 〜4〜
先のふたりに気を取られていると、後からまた男が2人馬に乗ってやってきた。
「まったく……幸の奴は騒がしいなぁ」
「信玄様も早く戻りますよ」
「わかってる。でもこの天女をここに置いていく訳には行かないだろ?佐助。」
「はぁ…」
(天女…?)
私を見て《天女》とあまりに似つかわしくない言葉を吐いた男は、ふわっと軽い身のこなしで馬を降り、私の前へとやってきた。
「お嬢さん、こんな場所にたった1人でどうしたんだい?」
「えっと……ちょっと用事が……」
「この辺りはあまり治安が良くない。良ければ一緒に俺の城へと来ないか……?」
「は?城?」
「信玄様、ダメですよ。」
「ったく、雪も佐助も頭が硬いな。そんなんじゃ女性にモテないぞ?」
「いいです別に。それより早く城へ戻りますよ。」
「……はいはい。わかったよ。」
そう言いながら男は馬にまたがり、そのまま私の前へと寄ってきた。
「お嬢さん、これはきっと運命の出会いだ。また会えるのを楽しみにしているよ……」
そう言った男は私に満面の笑みをみせ、さっき謙信と呼ばれた男が駆けて行った方へ走り出す。
佐助と呼ばれた男もそれに続くかと思いきや、私を見つめてこう言った。
「ねぇ、君は平成から来た……よね?」