第16章 〜16〜
「おお、ちゃんと待ってたな」
「うん。いらっしゃい。」
政宗は座布団に座ると私を真っ直ぐに見た。
私がなんとなく真面目な雰囲気を感じ、少し身構えると政宗が小さく笑った。
「ふ、そんな構えるな」
「だって……なんか……」
「お前に謝る事がある」
「謝ること?」
「今日の昼の話だ。俺が部屋を訪ねた時、優鞠と過去の話をしていたろ」
「あ、うん。なんで?」
「話を聞いた。」
「え……」
「悪いと思ったんだが……つい気になってな……すまん。」
「謝らないで?政宗にもちゃんと話そうとは思ってたし。話す手間が省けたって事でいいじゃない」
私がそうあっけらかんと言うと、政宗は困った様な悲しい様な表情を見せた。
(なんでそんな顔するの……)
「なんでそんな風に言える」
「え?」
「お前、寂しくないのか」
「寂しい?」
「うーん……」
「家族も死んで友達も居なくて、毎日働き詰めで……終いには違う時代に飛ばされて……寂しくないのか?」
「……家族がいないのはもう慣れた……かな。友達は作ろうと思えば作れた。でもそうしなかったのは自分だし……働き詰めだったのは生きるためだし……」
「…………」
「この時代に飛ばされたのは、最初はそりゃなんで私がって思ったよ?でも、数日しか経ってないけど毎日楽しいなって思ってる」
「……楽しい?」
「うん。前より今の方が人と関わることが楽しいの。」
「……そうか……」
「友達も出来たし……知らない事だらけで毎日新鮮だし。」
「お前にとって……この時代に来たことは良かったんだな」
「そうかもね。残してきちゃった人もいないし、未練も無いし。ただ寿命尽きるの待ってた人生だったから。」
私がそう言うと、政宗は私の頭をくしゃっと優しく撫でた。