第12章 〜12〜
「そう決心してからは毎日が必死だった。家のことをやりながら、勉強もして、外で働けるようになってからは毎日働いていた。」
「……様は強い人ですね」
「そんな事ないよ。優鞠と一緒で、生きるために必死だった。少しでも早くお金を貯めて、あの家を出たかった。それだけが目標でその事しか考えてなかった。」
「………………」
「それでね、16の時やっと1人で家を借りて、働きながら生きていけるだけのお金が溜まってね。家を出たの。」
「……16でおひとりで暮らされてたんですか……」
「この時代では珍しい?」
「そうですね、働きに出ている事は珍しくはないかも知れませんが、その歳で女性が家を借りて1人で暮らしている人は少ないと思います……」
「私の時代でも珍しかったよ?大体18とか20の時に家を出る人が多かったかな。」
「……そうですか……」
「でも不安なんて無かった。1人で生きていけることが嬉しかった。家に居ても気の休まる時なんて無かったからね。」
「……」
「家を出る時ね、持ってたお金から10万置いていったの。今の価値にするといくらか分かんないんだけど……私のひと月のお給料と少しってぐらいの金額かな」
「……どうして嫌っていたのに、お金なんて置いていったのですか?」
「何があっても、もう私に関わらないで欲しかったから」
「!それは……」
「簡単に言うと手切れ金?」
そう言って私は笑った。
「昔育てた恩を返せ!とか言われても、恩なんて少しも感じてないし。後々面倒に巻き込んで欲しく無かったから。」
「……様は大人ですね」
「そうかな?今思えば腹の立つ餓鬼だなって思うよ?」
「そんな……」
「まあ、その甲斐あってか、その家の人が出ていった私を探し出すなんてことも無かった。あの人達にしてみたら、厄介者が出ていった上にお金まで置いてったんだもん。ありがたい話だったんじゃない?」
「…………」
私はお茶を飲んで一息ついてから、また話を続けた。