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【HQ】繋がる縁の円

第23章 期間限定sharing.


家からは出たけど、足取りは重い。

私は、さっきのやり取りが、日常のままであって欲しいと、思ってしまった。

あんなに仲の悪い妹相手でも、そう思ってしまうんだ。
きっと、きとりちゃんは、今の私よりもずっと、あの日常の中に居たかった筈なんだ。

こうなったら、私は何がなんでも、あの家を空にはしない。
秋紀を選ぶ事は、私には出来ない。
黒尾さんが、なんとかしてくれそうな話はしていたけど、そもそも、もう自然消滅したようなものだ。
このまま、連絡がないままでいい。

私自身が、きとりちゃんの帰りを待つんだ。

しっかりと心が決まった事で、残っていた未練を断ち切った。

…つもり、だったのに。

秋紀の事を思い出した事で、連絡がきたら?なんて、もしもを考え始めてしまった。
別れ話だったら結果は同じだけど、何か理由があったから連絡が無くなってただけで別れるつもりが向こうに無かったら?
私に秋紀を拒絶する事は出来るのだろうか。

秋紀が結婚を意識してる事は知っている。
私が結婚したくない理由も知ってくれている。

でも、2人だけの生活を求めようとした時、協力しようとしてくれている人も居る。

それを引き合いに出されたら、ノーを言えるのか。

バイト先に着いても、仕事が始まっても、そんな事ばかり考えていて、ミスを連発。
その為なのか、今日は人が足りているから、と理由をつけて強制的に仕事を上がらされた。

バイトは終わったけど、早上がりさせられたなんてみつに知られたら嫌な事を言われそうで、かおるさんの店で手伝いがてら時間を潰させて貰う事にする。

もしかしたら、私の様子が変だと気付いて、話を聞いてくれるかも知れないと、少しの期待もあって、そちらに向かった。

辿り着いた店。
木兎さんは仕事で居なかったけど、かおるさんは勿論居て。
私の期待通り、様子が変なのには気付いてくれた。

でも、話は出来なかった。
思えば、この人は私と秋紀が結婚をしない本当の理由を知らない。
表向きの、秋紀が独立するまで苦労させたくないって話のままになっているからだ。

だから、家の中の雰囲気が悪い事で悩んでいるという事にして、お茶を濁しながら本来のバイトが終わる時間まで居させて貰った。
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