第23章 期間限定sharing.
引っ越しをするなら、私の手元に私物を戻す。
それは、当たり前の事だ。
開けてしまったのもあるし、荷物は自分で家に持って帰った。
連絡もなく、勝手に纏められて、更には宅配便まで使う予定だったのは何故か、なんて。
それは、本人にしか分からない事なので、考えるだけ無駄である。
それよりも、考えるべきは、引っ越すならば、合鍵をどうするか、だ。
扉を閉めてから、ポストなり郵便受けなりに返却する手段はあったけど。
これは、秋紀に初めて渡された物でもある訳で。
簡単に手放したくないのが本音だ。
くすんで元の色すら分からない上に、解れて半分くらいは糸の束になったリボン。
それが結び付けられた鍵。
手のひらに乗せて眺める。
それだけじゃ何も決められない。
本来の目的だった秋紀の状況を確認する事も、出来ていないのも気掛かりではある。
連絡をすれば、何故引っ越すのかも知れるし、荷物を宅配しようとした理由も分かる。
合鍵をどうするか、だって聞ける。
それなのに、私から電話する事も、メッセージを送る事すらも、出来なかった。
あれだけ頻繁に連絡をくれていたのだ。
連絡が途絶えたのには、秋紀なりの理由がある。
だから、待つ事が一番正しいのだと思い込んでいた。