第22章 2人だけで
‐月島side‐
目の前まで歩み寄ってきたりんさんの瞳が僕を映している。
しっかりと、僕だけを見詰めている。
この眼が本当に大切で、失いたくないものなのに…。
「取り繕う必要ないんじゃない?宮城に行くよって話してから変だからバレバレだよ。」
口からは、素直じゃない言葉ばかり出てくる自分が嫌だ。
こんな責めるような言い方したら、また喧嘩になるだけ。
そう思ったのに、りんさんは言い返してくる訳じゃなく。
「まぁ、それに関係してる事で悩んでるからね。」
肯定でも否定でもない言葉を返してきた。
じゃあ、何に悩んでいるの?なんて。
優しく聞いてやれる能力は持ち合わせてはいない。
出来るのは、ただ黙って先の言葉を聞くくらい…なんだけど。
「…寒い。」
12月も末。
真冬である今の季節に、外でただ立ち話をしてやれる余裕なんか無かった。
「そうだね。じゃ、帰ろうか。どっかでお茶する時間帯じゃないし。
んで、歩きながらで良いから、私の話聞いて?」
同意はしてくれたのに、家に誘ってくれないのがイラッとして。
「外で話すような内容なワケ?」
「じゃあ、どこで話すのよ?」
室内を提案したのに、察しが悪いのか、家とは言ってくれなくてイライラが増す。
僕から言ったら負けな気がして、意地になっているのもあって、口に出せなかった。