第21章 企み秘めたる結婚式
黒尾さんだって、人の行動の裏を読む人で。
わざわざ赤葦さんが種類を教えてきた意味は考えた筈。
それなら、これが『愛の告白』だと分かっていて。
「…それ持って、飛行機乗りたくねぇんだよ。
だから、1輪だけ持って帰るわ。」
花を1本だけ摘んで、ブーケから引き抜いた。
「確かに、男が花束抱えて乗り物って恥ずかしいわね。」
それだけで納得したように、きとりちゃんがブーケを引く。
本人達の中では、どう変換された行動なのか分からない。
でも、私には…。
まだ伝え合う事はしないけど、お互いの気持ちを受け取る意思表示に見えた。
だって、2人が笑い合っているから。
基本ネガティブな私ですら、悪い方向の事を考えられない。
幸せそうな2人の雰囲気を破るように、搭乗時間を告げるアナウンスが響いた。
黒尾さんが、きとりちゃんから離れて、搭乗口に向かっていく。
「クロ、またね。」
「おぅ。また。」
再会を希望する2人の別れの挨拶。
やっぱり、2人は想い合っているのだと確信出来た。
2人がした、30歳の約束は生きている。
それが叶う日が来て。
いつか『幸福な日々』を過ごす2人を想像せずにはいられなかった。