第21章 企み秘めたる結婚式
‐きとりside‐
私達に、血の繋がりはない。
そして、子どもでもない。
仲が良い家族みたいなものであっても、手を繋いで歩くなんて有り得ない。
そう思っていても、振り払えないどころか、ちょっと握り返したくなりすらしている。
結局、私は独りの時間が嫌いなままで。
心を許せる人と、一緒にいられる時間を無駄にしたくはないのだ。
しかも、さっきの鋭い視線は無くなって、いつものただ読めない笑顔だけになってしまったら、尚更だ。
外面の良いクロが、この顔をわざと見せてくるのは、親しい人間だけだと、私は知っているから。
久々に触れる人の温もりと、懐かしい顔に絆されて、何も喋れなくなっていた。
ホテルの前に着くと、手が離されて待たされる。
空気に触れた手のひらが冷えていくのが、どうしようもなく淋しくて。
「…クロ、帰ろ。」
すぐに戻ってきたクロの空いた手を握った。
行こう、じゃなくて、帰ろう。
自然と出した言葉。
深い意味なんて考えていなかったのに、クロは柔らかく笑う。
何を企んでいる訳でもなく、隠し事がある訳でも無さそうな、優しい表情。
「…あぁ、帰るか。」
出てきた声までも優しくて、握り返された手が暖かくて。
心臓が跳ねたのは、内緒の話だ。