第13章 お食事会
襖を開けた途端、こちらに向く家族の視線。
どのタイミングで、秋紀を紹介して良いのか分からず、取り敢えず席に着く。
赤葦さんも、みつの隣に戻ったけど、秋紀は戸惑っていた。
勝手に座って良いのか迷っているんだろう。
「…座れば。」
「いや、勝手に座る訳には…。」
「1人だけ立ってたら、不自然。」
「そりゃ分かってるが、赤葦みたいに堂々としてられる程、メンタル強くねぇよ。」
声を掛けても遠慮される。
家長である父から声を掛けて貰わないと駄目そうだ。
「座りなさい。」
「はい、失礼します。」
視線を父に向けると、分かってくれたようで、やっと秋紀が腰を下ろした。
全員が着席した状態になっても、何かが始まる訳じゃなく、沈黙が流れる。
「みつ、赤葦さんを紹介するんじゃないの。」
どうにかして、話を始めさせようとみつに小声で話し掛けた。
「姉ちゃん達が来る前に済ませたよ。」
だけど、本題であった筈のそれは終わっていたようだ。
こうなると、私が話を始めるのなんて難しい。
どうすべきか、考えていると溜め息の音が聞こえて。
「…りら、その男を紹介しないのか?」
威圧感のある、父の声が聞こえてきた。
タイミングが掴めず、迷っていたけど、こうして促してくるなら言って良いという事。
「こちら、木葉秋紀さんです。」
隣に座る秋紀を手のひらで示して、言葉を吐き出したけど。
家族の前で、彼氏ですとか、お付き合いしてますとか、言いづらくて次の言葉が出てこなかった。