第11章 裏で動いた恋模様
‐赤葦side‐
上手く船から船へと渡れて、それから数時間の内に港に降り立った。
まだ本州ではないけれど、橋で繋がっているから、最悪の場合はタクシーでも何でも使って、今日中には東京に戻ってやる。
どうやら、漁師から漁師へと、俺が東京に一刻も早く帰りたいと伝わっていたようで。
主要な駅まで、車を出してくれた。
思っていた以上に順調に、東京まで近付いていく。
新幹線の自由席は、お盆に重なっているのもあって、正直苦しいくらいの乗車率ではあったけど。
汗臭いのには、慣れている。
立ちっ放しで数時間を過ごす、体力もある。
流石に、スマホを確認する余裕は無かったけど。
重要な連絡など無いだろうから、振動した気がしても無視をしていた。
そして、やっとの事で辿り着いた東京駅。
時間を確認しようと、そこで取り出したスマホ。
ランプが光っていた。
着信と、メール。
着信の履歴には、みつとりらからのものが残っていて。
慌てて、折り返したのはみつの方。
この時点で、自分がみつを選んだのだと確信した。
『…はい、みつです。』
かなり長いコール音の後に通話になる。
明るく聞こえたけど、若干鼻に掛かったような声であったのが気に掛かった。
『あー…なんか、色々とゴメンね。後、アリガト。』
「何について謝って、何について礼を言ってるのか、分からないんだけど?」
『もしかして、メール見てないの?』
泣いていたような気がして聞こうとしたけど、その前に喋られてしまって。
その言葉の意味も気になったから、そちらを聞いてみると質問返し。
『メール、見たら意味分かるよ。バイバーイ。』
こちらの返答も待たずに、話を完結したみつによって電話が切られた。
もう一度、折り返す前に読んでおこうと開いたメール。
画面に映し出された文字に、心臓が止まってしまった気がした。