第11章 裏で動いた恋模様
‐みつside‐
最悪だ。
よりにもよって、このトサカ男の前で号泣して。
更に、外には出さないようにしてきた気持ちを、声に出してしまった。
弱味を握られるのだけは避けたかったのに。
一回、表に出した言葉を無理に取り消そうとしたって、この男には効かないだろう。
どうしようか、考える事すら出来ずに未だ止まらない涙を隠すように手で顔を覆った。
視界を閉じた事で、敏感になった耳に衣擦れの音が聞こえてきて。
暖かい何かに体が包まれた。
確認しようと顔から手を退かしても、目の前に布の感触があるだけで。
ただ、この布の柄はテツローくんが着ていたシャツと同じで。
抱き締められてると、分かった時には、あやすように背中をポンポンと叩かれている。
「存分にオニィサンの胸で泣きなさい。…顔、見ねぇから。」
降ってくる声は、ふざけているような内容なのに優しかった。
人の温もりを感じるのも久々で、甘えていいと言われている気がして。
広い背中に手を回してシャツを掴む。
多分、涙とか鼻水とか、汚いとは思わずに抱き締めていてくれるだろうから。
胸元に顔を押し付けて、遠慮無く泣かせて貰う事にした。