第2章 人魚姫【ギャグ】
ところ変わって砂浜。ルーマニアが魔方陣を描いたので、姫はその上にそっと立ちます。彼が杖を構えて何やら呪文を唱えると、魔方陣が光に包ました。
気がづくと姫は人魚に戻っていました。陽光を受けてきらきらと輝く鱗、透き通る尾ひれ。たった半日なのに、とても懐かしく感じます。
「ありがとうございます! あ、声出る!」
「元に戻れてよかったんだよー」
魔法を解いたルーマニアは満足そうに目を細めて安堵の声をあげました。口元から覗く八重歯が可愛らしいです。
「本当にありがとうございます! 助かりました!」
「いいってことよ~」
こうして姫は王宮の人達に別れを告げて海へ帰りました。
姫は傾いた太陽に照らされてきらきらと輝く水面みなもから顔を出しながらゆっくりと洞窟へ泳いで行きました。
海辺の岩場にある洞窟では眉g……失礼、魔法使いアーサーが怪しげな魔法書のページをめくっています。が洞窟の入口に腰掛けてアーサーを呼びました。
「アーサー、元に戻れたわよ」
「帰ってきたのか。また話せるようになったんだな」
「今日は散々だったわ。声が出なくなるし、声を無くしてまで会いに行った王子は自業自得で海に落ちただけだったみたいだし」
「どうやって元に戻ったんだ?」
「王宮の魔法使いが、王子を助けたお礼として魔法を解いてくれたのよ」
「プラマイゼロってとこか」
お礼に魔法を解いてもらってもそれは最初に戻っただけで、新たに何かを得た訳ではありませんでした。姫は何のために王宮へ行ったのか、今では自分でもわかりません。
「まあその、お前の人間の姿、似合ってないこともなかったぞ」
「そりゃどーも」
「まあ俺がドレスを出してやったりしたしな。そう、俺は自分のセンスに惚れ惚れしてるしてるだけであって別にお前のことを、その、か、可愛いとかは思ってないんだからな」
「ふーん、へーえ」
「な、何だよ。文句あんのかよ」
「いいえー」