第2章 人魚姫【ギャグ】
「ああ、あれか! 誰か知らねえが俺を助けてくれたらしいぜ」
『それ、私です!』
やっと助けたのが姫だと伝えられました。声は出なくても、ホワイトボードがあれば会話が可能です。
「そうだったのか! 助かったぜ! ただ、助けてくれたなら、そこにしばらくいてほしかったぜ!」
『どうしてですか?』
姫は不思議に思って質問します。エリザは姫の横でニコニコしていました。
「すぐエリザに見つかっちまったんだよ。元々俺がふざけて貴族の坊っちゃんにチョッカイ出したのが原因でよ。キレたエリザに殴られた勢いで船から落ちたんだ」
「あんたがローデリヒさんに余計なことするからでしょ」
「何だよ、ちょっとからかっただけなのによ」
姫をよそに二人の喧嘩が始まってしまいました。するとどこからか咳払いが響きます。視線を移すと金髪をオールバックにした人が立っていました。
「兄さん、来客中に何をやっているんだ」
「おお、すまねえ。そういえばお前、名は何だ?」
『です』
「そうか! 俺はギルベルト、ギルでいい。こっちは弟のルートヴィッヒ。ルッツと呼べばいい」
そう言って銀髪赤眼の王子様は金髪碧眼の王子様を紹介しました。
「兄さんを助けてくれた礼をしたいと思う。何がいいか?」
『あー、えーっと……』
姫は困惑していました。例の女性は助けにいった訳ではなかったし、憧れの王子様も自業自得で海に落ちたのだから今さら憧れるまでもない。彼女はイタズラが原因で海に落とされた人のために声を失ってしまったのです。
「おいらに任せて! 姫って魔法かけられてるよね? おいらが戻してあげるよー」
「あんたいたのね」
ドアから顔を覗かせるのは王室付魔法使いのルーマニアでした。人懐っこい笑顔を浮かべて姫に問いかけます。対照的にエリザは貼り付けたような笑みを浮かべていました。
『はい、本当は人魚ですが人間の脚がほしくて、魔法をかけてもらったんです。でも声が出なくなってしまいました』
「じゃあおいらが魔法を解いてあげる。 砂浜に行くよー。そこで魔方陣描くから、陣の上に立ってね」