第42章 あなたの為なら☆政宗
そう…だったんだ。優しそうな人に見えたのに。
『ところで、俺たちは謙信・武田軍が仕掛けて来る前に打って出る。三成を残して行くから、お前はここにいろ。いいな。』
有無を言わせぬ物言いに、頷くしか出来ない。
政宗達一行が静かに陣を立った。
一緒にいたい。政宗に何かあったら…。
居ても立っても居られなくなって、こっそり陣を抜け出した。
馬に乗ると気付かれるので徒歩で追い掛ける。
まだ足がふらつくが、気にしていられない。
『あ、いた!』
今まさに、的陣営とぶつかりあっている。
あきらは木陰に隠れて戦況を見やる。
一番先頭で華麗に戦っている政宗の姿が見えた。
『すごい…。』
襲いかかる相手を蹴散らしながら敵兵の中に突っ込んでいく。
息を飲んで見つめていると、あきらの首元に冷たい感触がした。
え!?
いつの間にか後ろに回り込んだ敵の一人が、あきらの首元に刀を突き付けていた。
しまった…!!
『信長の弟君…あきら之丞だな?』
そう言うと、あきらの両腕を後ろで掴み歩き出す。
そのまま皆が戦っている場所まで連れて行かれた。
『伊達政宗!』
政宗の名を呼ぶと、その面前にあきらを突き出した。
『な、なんで お前がここにいるんだ!?』
政宗が驚き目を見開く。
『お前らにとって大事な武将なんだろ?こいつの命が大事なら、刀を置いて こっちに来て貰おうか。』
『政宗!こんな奴の言うことは聞かなくていい!』
あきらが叫ぶと、男が腕を捻り上げた。
痛っ!!
『…解った。解ったから、そいつから手 離せ。』
政宗がヒラリと馬を降りる。
二人に近づきながら、持っていた物と腰に差していた物、両方の刀を放り捨てた。
それを見て、腕を捻り上げていた男の力が緩んだ。
今だ!
あきらが体をかがめ、男の足を掬う。うわっ、と声を上げてふらついた所を、政宗が蹴り倒す。
馬乗りになって男の腕を捻り上げた。
『観念しろ。あと、お前も城に帰ったら説教だ。』
説教と言われても、政宗が生きていてくれたことが嬉しくて笑顔になるあきらだった。