第29章 お見舞い☆佐助
チュンチュン
ん…。
小鳥のさえずりに目を覚ます。
障子から漏れる光が眩しい。
朝か。
あきらが ゆっくりと体を起こそうと…。
『あれっ!?起きれない…?』
今度は思い切り反動をつけて起き上がる。
『よっ…いっだーっ!』
お腹や背中に激痛が走った。
あぁ、そうか私、あっちこっち怪我してたんだっけ。
『あきらさん!?大丈夫?』
この声は…
『佐助くん?』
答えると、天井裏から音もなく佐助が降りてくる。
心配そうにあきらの顔を覗き込む。
『まだ辛そうだね。俺のことは気にしなくていいから寝てて。』
そう言われ、頷いて また横になる。
『…怪我の事、知ってたの?』
あきらが尋ねると、
『顕如討伐作戦の事も、君が敵に追われて怪我をした事も、顕如を捕らえた事も知ってる。』
佐助が無表情で答える。
そうなんだ。さすが忍(しのび)、というか佐助くんが凄い忍ってことかな。
関心しながら見つめていると、
『信玄さまや幸村も心配してる。謙信さまも…多分。』
と、続けた。
ガサゴソと懐を探ると、あきらの目の前に何やら差し出す。
『この羊羹は信玄さまから。小豆は体にいいらしい。
これは幸村から。「腕守り」って言って二の腕に巻くお守りだそうだよ。
で、これは謙信さまから。痛い所にでも貼れ、って梅干。
こめかみに貼れば、頭痛には効きそうだね。』
みんな…。
『私、敵軍なのに…。』
頭の横に並べられた見舞いの品を見つめ、嬉しさと申し訳なさがこみあげる。
『みんな好きでやってるんだから貰ってあげて。持って帰ると、俺がどやされる。』
と、佐助が肩をすくめた。その仕草が可笑しくて二人で笑い合う。
『あとこれは、また戦がある時に持って行って欲しい。
俺特製の煙玉と閃光弾、それからマキビシだ。
煙玉は投げつけると50m四方に煙が広がる。閃光弾は、もう少し範囲が狭くなるけど目眩しが出来る。マキビシは読んで字のごとく、だね。』
佐助は、それらを革袋に入れてあきらに渡す。