第48章 あなたの為なら☆幸村
えっ?この声…
『佐助くん!?」
佐助が、すっ、と少しだけ兜を持ち上げ目を合わせる。
『戦ってるふりをしながら、この場を逃げよう。もし気付かれたら、あきらさん一人で逃げて。』
『逃げてって…どうして。』
『俺と幸村で考えた結果だよ。この戦の間、君を なるべく幸村から遠ざける。』
そこまで言うと、また佐助が刀を振り上げた。
佐助くん、戦ってるふりにしては気迫が凄いってば!
呆れつつ、その刀を受け止める。
小声で『行って!』と言われ、あきらが静かに その場を去った。
… … …
近くの林を ゆっくりと馬で歩く。
逃げると言っても、何処へ逃げるのか聞き忘れてしまった。
取り敢えず、この辺で時間をつぶしておこうかな。
林を抜けようとした時、近くに人の気配を感じて立ち止まる。
ん?佐助くんかな。
『佐助くん?』
声を掛けるが返事が無い。
そちらを伺っていると、チクリと足元に痛みが走った。
『いっ…!な…に…。』
意識はあるのに体の力が抜けて行く。手綱を握っている感覚が無くなる。
グラリと体が傾き、そのまま馬上から滑り落ちた。
ドサッ!
な、なにが起きたの!?
ザク、ザクと土を踏む音がして、目の前に二本の足が見えた。
『どうだ、この薬の効き目は?意識はあるのに体が動かなくて、もどかしいだろう。』
声が近づき、その声の主が しゃがみ込んだのだと解る。
グイッと髪を掴まれ上を向かされると、黒装束に身を包んだ男が見えた。
『け、顕如の…?軍勢は…捕らえた…はず。』
たどたどしくあきらが口を開く。舌も良く動かないらしい。
『ああ、大半はな。だが、逃げおおせた我らは、各地に散った同胞を集め再び戦を仕掛けるべく、この地に赴いたのだ。
そうしたら、丁度いい所に鴨が葱背負って やって来た、という訳だ。』
その顔は不気味に歪み、あきらの背筋を冷たいものが伝った。
『お前は織田側にも上杉側にも近しいらしいな。
さーて、まずはどちらを おびき出すかな。』
男があきらの上から下まで舐め回すように見ると、黒装束の腰紐をほどきだす。
何を…。
そして、いかにも嬉しそうに呟いた。
『まずは、その口で俺を楽しませて貰おうか。』
なっ…!?
男が自分の物をあきらの口元に近づける。