第8章 【上杉謙信・準備編】
今日も麗亞は朝から各武将のお屋敷に書状や届け物をしていた。現代と違ってクリスマスなんてない時代だから、城下町はクリスマスの雰囲気はなく静かなものだ。
でも今年は城下の子供達に、クリスマスプレゼントを届けられると思うと何だかワクワクして顔が緩んでしまう。
(私も何かできることが有れば、どんどんお手伝いしなきゃ。)
麗亞はそんなことを考えながら歩いていたら、どこかしらから罵声が聞こえてきた。そして、目の前の茶屋から店主がまさに飛んで出てきたかと思うと地面に倒れ込んだ。
それは、いつも秀吉さんと行く茶屋のおじさんだった。
「大変!!!」
思わず駆け寄って声をかける。
「大丈夫ですか?何処か怪我は?」
ヨロヨロと起き上がり私の顔を見た店主は焦った様子で私に告げた。
店「ああ、麗亞様。わしはだいじょうぶです、それより早く逃げて下さい。麗亞様に何かあっては信長様になんとお詫びしたらいいか。」
「えっ?そんなことできませんよ、それより何があったんですか?何処か痛いところは?」
そう言って店主に手をかけた時、後ろから何人かのドカドカという足音とともに、罵声がまた間近で聞こえた。
「おい!!!じじぃ!ふざけた真似しやがって!!!」
見ると浪人が二人店から出てきた。しかしふと、店主の側にいた麗亞に目を留める。
浪1「あ~?なんだてめぇ?」
店主は、慌てて麗亞を自分の後ろにやり言う
店「この人は関係ないですから。」
しかしもう一人の浪人が、麗亞の顔をまじまじ見ると、ニヤリと笑いもう一人の浪人に告げた。
浪2「こいつよく見ると、上玉じゃないか。」
浪人達は今度は店主から麗亞へとにじり寄って来る。
それを見た店主は、浪人の一人にしがみつき叫んだ。
店「早く逃げてくだされ!!!!」
浪1「なんだこらぁ、生意気な爺だな!」
そういうと店主を蹴り上げた、店主は地面に倒れ、ゲホゲホと咳込む。思わず麗亞は店主に駆け寄る。
「大丈夫ですか?なんて酷い事を!!」
浪人たちをキッと睨みつける。
浪2「おいおい、人の心配してる暇があるのかい?」
そういうと、麗亞の手首を掴み引き立たせた。強い力で捕まれたので、鈍い痛みが走る。