第6章 【猿飛佐助・暗躍編】
(やばいな・・この状況。迂闊に動けば気づかれる。それだけは避けたい。)
チャプ・・・と麗亞が湯に浸かる音がする。その直後麗亞が声を掛ける。
「大丈夫だよ~家康~。後ろ向いてるから~」
その声を聴いた瞬間佐助の目が輝いた。
(なにっ?!家康さんが来てる?!!!)
そーっと覗き込むと、丁度家康が扉を開けて入って来た。
(こんな所で家康さんの裸が見れるなんて、なんてラッキーなんだ。色白なんだが、それでいて筋肉質で思いのほか逞しい体つきなのだな。着やせするタイプなのか・・・。)
湯に浸かった家康を見ないようにして背中を向けてる麗亞。
「温度も丁度いいね。それに白いお湯なんだね。なんか肌に良さそう。」
呑気な会話を続けている二人。でもよくよく考えると、二人でこんなところで混浴をしている訳でなんとも言えない気持ちになる。
(天下の家康さんと混浴できるなんてなんてラッキーなんだ麗亞さんは・・・いや、違うだろ?そもそも家康さんとなんで二人きりで混浴なんかしてるんだ?)
色々な気持ちが入り混じり気持ちが忙しなくなる。羨ましいという気持ちと、なんだか胸の奥がチリチリ焦げるようなモヤモヤ感が佐助の心を苛む。
(何なんだこの気持ちは。こんな感情分からない。)
すると佐助の前に飛び出してくる影があり思わず身体が反応する。その黒い影を捕まえると、隠れていた岩陰の茂みを揺らした。
(しまった!!)
とっさにその捕まえたものを露天風呂に放り込んだ。自分でも確認しなかったが、どうやら子猿だったようだ。
その瞬間露天風呂では大騒ぎになっているようだった。しかしこの瞬間を逃すわけにはいかないと思った佐助は2人が猿に気を取られている隙に、佐助はその場を後にした。
最後に見たのは家康が麗亞を抱きとめている瞬間だった。
その光景に佐助の胸がチクリと痛んだが、その感情がどういうものなのかこの時の佐助はまだ知らなかった。