第3章 【武田信玄・準備編】
「いえ、そんな、楽しかったです。私皆にお手伝いをして回ろうって思っていたんで、信玄様のお手伝いができてうれしかったです。」
玄「君はくりすますとやらに、もし一人だけ逢瀬をするとしたら誰がいいかい?」
「え?、またその質問ですか?」
きょとんとした麗亞をみて信玄が少し訝しげに問う。
玄「またとは?誰か同じことを聞いたのか?」
「信長様が・・・。佐助君から現代のクリスマスには恋人二人で楽しむイベントでもあるんだ。って聞いたらしくて。『お前は誰と過ごしたい?』と聞かれたんです。」
玄「そうか・・・、信長も流石抜け目がないな。で、君はなんて答えたんだい?」
麗亞は少しうつむき加減で答えた。
「信長様にも言ったんですけど、今こうやって皆と楽しく過ごせているのって何ていうか、奇跡みたいなものなんですよね、本当は敵同士で闘わなきゃいけない立場なのに。」
手に持っている湯呑をギュッと握りお茶の水面を見つめながら話を続けた。
「でも、こうやって楽しく過ごせている皆を見ているとなんか私嬉しくて。ずっとこの時間が過ごせればいいのに・・・。そうしたら、誰も傷つかなくて、平和に暮らせるのにって。」
「だから、私は皆とクリスマスは楽しく過ごしたいんです。こうやって楽しく仲良くできる今だからこそ、この時間を大事にしたいんです。」
その一生懸命話す姿をじっと信玄は見つめた。
玄「そうか、それが我が姫の願い・・・という訳か。」
そう言って、草餅をパクリと口に放り込んだ。
幸「あーーー二人でなにしてんですかー?また信玄様。麗亞を途中で連れてきちゃったでしょ?」
幸村と佐助が荷物を抱えやって来た。
玄「見つかったか。おーお、たいそうなもの抱えてるじゃないか幸。いいもの見つかったか?」
佐「麗亞さん、何もされてない?セクハラとか?」
「う、うん、大丈夫だよ丁度お茶してたの。あ、二人もどう?」
幸「お、草餅かぁ~って言うか、また信玄様甘い物買って来て~。程々にしてくださいね。」
玄「はい、はい、もうこれくらいにしときますよ。」
幸「はい、は一回。」
そんな二人のやり取りに麗亞はちょっと可笑しくなった。
信玄はさっきの麗亞の言葉を心の中で反芻しながら、そのことについて考えていたのだった。