第4章 地獄を見る
──やっとこと火鉢。天井からぶら下がる鎖。
そして、無造作に置かれた、薄汚い布団。
まさか、と思った。
私の 酷い思い違いだと。
そんな事はないと。
あってはならないと。
しかし、その考えはいともたやすく崩れ去る。数分前の私を殴り倒したくなった。
ここは、本当は前任者が寝泊まりしていた部屋などではない。おぞましい悪鬼羅刹も目を瞑るようなのような所業がここで起きたのだ。
ふらりと、部屋の中へと足を進める。
薄らと漂う悪臭に、冷静な思考は削り取られる。いや、もうとっくに私は冷静などではないだろう。
こうして部屋の中の全貌を知るまでもなく、早々に私の悪い予感は現実のものとなる。この行為はその予感を裏付け、確固たるものにするだけだ。
血が飛んだような跡。
布団にも“行為”の痕跡が見られた。
そして、審神者ではないであろう人間の出入り。
点と点は繋がり、一つの事実へと向かっていく。
心臓が張り裂けんばかりに激しい動悸が起き、喉は勝手にひゅうひゅうと笛を鳴らす。頭は紐で引き絞られているかのように痛んでギチギチと悲鳴をあげた。
それらが併発した為余計に、その苛立ちはもはやこの部屋の惨状に対するものなのか或いは自身の身体に対するものなのか分からなくなる。
ここは、この場所は、
間違い無く 地獄だ。