第2章 台所事変
第二章 『台所事変』
* * *
「よし、それじゃ案内するよ主」
「おー。頼むぜ〜」
膝を叩いて立ち上がる清光に続き、私も縁側から腰を上げる。
改めてこの本丸を見て感じたことだが、本当にここは静かだ。異様な程に静まり返っている。人の気配というものが感じられない。
「ねぇ、他の刀のみんなは?」
「他の連中はほぼみーんな引き篭もってるよ。人の身だしお腹一応空くから食糧は定期的に買ってるよ。俺が台所に置いとくの。勝手に持ってって食べてんじゃない?オレも詳しい事は分かんないけど、厠とか食事の時以外 ほとんど動いてないよ」
「そっか…」
明日への希望を見い出せず、まるで抜け殻のように過ごしている刀剣達。その光景を想像するだけで胸が痛んだ。
「じゃあどうしようか?まずはー…そうだなぁ…粟田口の部屋から行く?」
「粟田口っていうと、短刀の名手の粟田口吉光の刀達?」
「そうそう。さすが主♪」
訓練生時代にある程度の刀の知識も持つよう言われ、刀一覧集の本なども読んでいたこともあった。しかし、今ここじゃあんまり役に立つとは思えん。誰か刀達の攻略法教えてくれや。
「うーん……いきなり刀達のとこは、ハードル高ぇべ。公共の場とかにして。台所とかさ」
ていうかそうしてくれないと私が持たない。主にメンタル面で。
「え〜良いけど……んー、まぁ良いか」
渋る表情を見せるが、清光は歩き出す。