第1章 心操人使◆世話焼き幼馴染み
なまえがベッドに寝そべるので、人使は布団をかけてやる。
「ね、ひと」
「ん?」
潤んだ瞳が、今にも睫毛を濡らしそうだ。
「今日は、私が寝るまでずっと傍に居てくれる?」
「うん、いいよ」
「なんでって、聞かないの?」
「…なんで?」
なまえは、ふふっと笑って、寝言のような声で囁いた。
「そうしたら、一日ずっと楽しい日でしょ?」
人使の手を取り、なまえは目蓋を閉じた。
なまえの手が、人使の体温で熱くなってゆく。
すっかり夢の中に居るなまえの髪を、人使はすいた。
「なまえが俺無しじゃ生きていけなくなればいいのに」
なまえは夢を見ていた。
昔の、人使と出会ったばかりの、小さな頃の夢を。
「なまえちゃん、あの……」
人使はとてももじもじして、言ってくれた。
なまえは、宝石みたいなその言葉が、とても、とても。
「おれのっ、およめさんになってください!」
嬉しくて、人使に抱き付いた。
「うんっ!なまえ、ひとくんのおよめさんになるっ!」
目が覚めた日曜日、人使は起こしに来ない。
なまえのベッドに頭を乗せて、眠っていた。
クッションに顔を埋めて、なまえは、どうしよう…と洩らした。
「ひとが起きちゃう…」
人使は見ていた。
薄目を開けて、目覚めた後のなまえを。
クッションから覗く、赤い耳も。
「なまえ」
「えっっひと!?…なぁんだ寝言……」
次は何を言おうか。心踊る、そんな朝。
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