Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第10章 アヤカシとわたし《第3体育館組》
寝過ごすところだったのを慌てて起き、目的の駅で降りる。ホームを出てすぐに、瓦屋根の商店街がずっと奥まで延びていた。
こういうの、趣があっていいなぁ。そんなことを思いながらポシェットからカメラを取り出し、パシャリとシャッターを切る。
和菓子屋さんでお饅頭とお煎餅を買って、それから宛もなく歩き出した。
『きれーな町……そうだ、高台あるかな』
これだけ綺麗な町並みだ、上から見たらさぞ壮観なのだろう。そう思ったわたしは、早速辺りを見渡した。するとちょうど駅の真裏辺り、ちらりと赤いものが見えた。
よく目を凝らして見ると、どうやらそれは神社の鳥居のようだった。
『行って、みよう、かな……』
歩き出したわたしの頭には、あの神社に行ってみたい、という思いしかなかった。それから10分もせずに神社には着いた。
『わぁ、立派ぁ……』
見上げた真っ赤な鳥居。丁寧に掃除されているのか、上へと続く石段には枯れ葉1つ落ちていない。ここの主はよっぽどの綺麗好きか。
『おじゃましまぁす』
1人呟き石段に足を掛けた、瞬間。ピリッとした空気を感じた。なんだろう、何か、人を遠ざけてるような雰囲気を感じる。大気が緊張に満ちていて、ピリピリする。
四方に意識を配りながら段を登る。頂上が見えてきた。残り5、4、3、2、1…0。全て登りきり、目を閉じる。そして、そろりと目を開き、ぐるりと周囲を見渡す。
何の変わりもない、ごく普通の神社だ。
1人の青年を、除いて。
向拝と呼ばれるお賽銭箱や鈴なんかのある場所。その前をホウキで掃く青年。20歳くらいに見える彼は、上は白で下は赤の袴を着ていた。ごく普通の、彼だったが。
耳と、尻尾が、見えた。
こちらには気付いてないようなので、しばし観察してみる。こんがりと焼けたパンのような色の耳と尻尾。形状からすると、キツネ耳のように見えなくもない。
風を感じると、耳がピクピクと動き、ふわっふわの尻尾がゆらゆらと揺れる。
『キツネ、だよなぁ。うん、キツネ……』
その小さな小さな呟きを、キツネの耳は聞き逃さなかった。ばっとわたしを振り向くと、驚きで目を真ん丸に見開き、脱兎の如くの勢いで駆けていってしまった。