Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第10章 アヤカシとわたし《第3体育館組》
【天草 said】
突然だが、わたくし天草星菜にはこの世のものでないモノ、つまり妖怪が視える。
妖怪…アヤカシとも呼ばれる彼らは、こことは少しズレた世界に生息していて、時々"こちらの世界"にやって来る。
物心付いた時には、わたしの傍に彼らはいつもいた。その存在に違和感を感じることも無かったし、むしろいることが当たり前だと、そう思ってさえもいた。
ある日、小学校であそこに妖怪がいるよ、とうっかり友達に言ってしまったことがある。翌日からわたしは変人扱いされた。
友達だと思っていたのは上辺だけで、本当はそうでもなかったらしい。"友情"とやらがどれほど脆いものなのか、小学2年生にして知ったわたしは、少し冷めた子供だった。
そんなわたしの趣味。それは、お散歩。
知ってる町、知らない街、どこでもいい。休みの日になると1人で出掛ける。幸い、親が放任主義だから問題ない。まぁ、小さい頃から変な発言を繰り返してきたわたしを気味悪がるのは、当然といったらそうなのだが。
そして今日も、お散歩である。
今日の目的地は、電車で数駅の割りと古い町。町並みが人気で、美味しい和菓子があるとか。善は急げと言うの、最低限の荷物をポシェットに詰め、わたしは家を出た。
『はぁ~、あったかぁ~!』
タイツ、薄いのにしてよかった。そう思うくらいのポカポカ陽気だ。ちなみにわたしの格好は、パステルイエローのパーカーに、白のロゴT、ミリタリー柄のショートパンツに黒タイツ。それと履き慣れたスニーカー。だいたい、最近はこんな感じだ。
『さてさて、行きますか』
駅までの道のり、数人(数匹か?)の妖怪を目にした。人の姿に角のあるものと、モコモコの毛玉みたいなもの。うちの近所では、よく見掛ける姿だった。
以前聞いたことがあるが、妖怪にも位があるらしいが、わたしが目にするのは下級ばかり。可愛らしい見た目のも多かったりする。
駅に着くと、すぐさまプラットフォームに留まっていた電車に乗り込む。空いていた席に座り、ぼんやりと外を眺める。車窓をまるで額縁のようにして広がる景色。住宅街を抜けると広がる緑が、陽を反射して光る。
ガタタンゴトトン、ガタタンゴトトン。
一定のリズムで繰り返される振動に、いつしかわたしは微睡んでいたのだった。