Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第9章 ☆アルコールぱにっく:山口
天草が元いた所へ急ぐと、それに気付いた山口が小さく微笑み、手を振った。
やだ、これじゃあ付き合ってるみたい…ってそうだった、付き合ってるんだ。キャーどうしようなんか緊張しちゃうーっ!
なんて脳内寸劇を天草が妄想し、身悶えしていると、極度の心配性&過保護な山口は大丈夫かと、あわあわしながら訊く。
「だだだ大丈夫!?」
『ごっ、ごめん、なんでもないの!あははっ、暑いねぇ、喉渇いちゃったや!』
変な想像を悟られないよう、天草はコップの中身をぐいっとあおる。気が動転していて、天草はその液体の正体に気付かないまま、飲み干してしまった。
『っぷはぁ、お茶おいしぃ…あ、れ……?』
「え、あ、天草さんっ!?」
山口と呼び掛けに答える間もなく、天草の体がぐらりと傾く。咄嗟に腕を伸ばした山口、バランスを崩した2人はそのまま倒れ、山口の足の上に天草が不時着した。
くたりと目を閉じたまま、動かなくなった天草。山口が何度も名前を呼び、それになんだなんだと回りも集まる。
肩を揺すって必死になって山口が名前を呼ぶと、パチリ、と天草は目を開いた。
「よかった、天草さ…」
『あぁっ、忠君だぁっ!』
「「「!?!?!?」」」
「ええっ!?」
忠くぅんと甘えた声を出し、天草は何の躊躇いもなく山口に抱き付いた。その行動に、周囲の野次馬、唖然。山口、同じく唖然。
『んっふっふ~、忠君~っ!』
すりすりとすり寄る天草に、山口は金魚のように口をパクパクさせる。
どうしよう、どうしよう!?天草さんはいつもは名字呼びなのになんか名前で呼んでくるし、しかもちっさいし柔いしなんかいい匂いするし……っじゃなくて!
「ちょちょちょっ、天草さん!?」
『むうぅ……いっつもみたく、星菜って名前で呼んでよぉ。ねぇ、忠君?』
「いっ、いや、みんなの前じゃ……」
おどおどと周りを見渡す山口。向けられるのは好奇の視線と羨望の眼差しと。どちらにせよ、あまり好意的には受け取れない感じだ。
そして頼みの綱の月島。フッと鼻で笑い、その後もクスクスと笑っている。途方に暮れた山口に、天草は更なる爆弾を投下した。