Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第8章 ★18年分のダイスキを。:花巻
【天草 side】
『おっじゃまっしまーす!』
貴大の家に来るの、かれこれ1ヶ月振りくらいかな。第2の我が家と化し、もはや勝手知ったる貴大の家。手を洗って貴大の部屋へ。
『わー、あんま変わってないねぇ』
「そりゃな。あ、てきとーに座ってて。なんか飲みもん持ってくるから」
『あいあいさー』
言われた通り、てきとーに座る。ベッドの端っこに座り、ぶーらぶーらと足を揺らす。
棚には初デートの時の写真とか、あとはバレー関係のものがたくさんあった。前来た時と1つ、違うところを見つけた。それは、壁にかかっているユニフォーム。
『あ、これ……』
ユニフォームの左下、少しだけもこっと膨らんだところがある。近付いて見てみると、手作りのお守りが丁寧に縫い付けられていた。
『まだ、付けててくれたんだ…』
宿敵烏野との試合を翌日に控えたあの日、あたしが縫ったものだった。そのユニを着て戦った貴大。結果は、惜しくも敗退。高校バレー生活最後の、試合だった。
「おまたーって、なんか泣きそう?」
『あ、貴大……』
麦茶と炭酸の入ったコップをトレーに載せ、部屋に戻ってきた貴大。あたしを見るなり驚き、トレーを机に載せ、それからぎゅうっと抱きしめてきた。
「なした、ん?」
『貴大……好き、大好き』
「ん、俺も。でもなんで泣いてんの?」
『うー、だって…………っ貴大、の、バレーしてるとこ、っもう、見れないかなって。そし、たらっ、なんか、悲し、くてっ』
バレーをしてる貴大が、好きだった。
スパイクが決まった笑顔が、大好きだった。
泣いたらダメ、泣きたくない、泣くもんか。そう思うほど、悔しかったのと悲しかったのとが溢れてきた。嗚咽が止まるまで、貴大はトントンと背中を叩いてくれた。
『ごめ、泣いちゃって……』
「うんにゃ、ありがとな、星菜。大好きな彼女が誕生日祝ってくれて、うまいケーキたらふく食えて、その上俺のこと想って涙流してくれるとかさ。最高だわ」
ニカッと笑う貴大。それにつられて、あたしもくしゃりと笑った。それから、不意に貴大が真面目な顔になり、ゆっくりと近付く。目を閉じると、唇に柔らかな感触。
まぶたの裏に映るのは、楽しそうにボールを追いかけ、気持ち良さそうにクイックを決める、そんな貴大の姿だった。