Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第7章 ★Look at me!:田中
部活後、今までを記録してあるノートなどを見せてもらった。何冊にも及ぶノートには、細かなことがびっしりと書いてあった。
これは、頑張らないと。
そう思ったわたしは、最後の一冊まで読み終えた。その時、きゅるる…とお腹が。
『うわ、もう7時過ぎてた!?お腹空いたよぉ、そうだ、坂ノ下商店行ってみよ』
そう呟き、リュックを背負う。部室にカギを掛けて坂道を駆け下りる。明かりの灯る昔ながらの商店には、店番にコーチがいた。
『烏養コーチ!こんばんは』
「おう、天草か」
最初はこんな人がコーチ?と思ったけど、有名な監督のお孫さんだとかで、烏野バレー部のことを常に考えていてくれてるとか。
どうしようかな、おやつにしようか。あ、肉まん。でも餡まんでもいいかな。そんな風にしてショーケースとにらめっこしていると、ガラリとドアが開く。
「ちわーっス!」
「おう田中か」
『え、田中先輩!』
バッと振り向く。そこにはさっきまで練習してたであろう田中先輩の姿。わたしに気付くとおー天草!と駆け寄る。
「遅くまで残ってたんだな」
『潔子さんにノートを見せてもらっていて。田中先輩は練習ですか?』
「おう。にしてもいいなぁ、潔子さんと2人きりだったのかーうらやましいぞ!」
このこの~と言いながら肘でわたしをグイグイと押してくる。こんな風に話せることはとても嬉しい。嬉しいのだ。けど、
『田中先輩、潔子さんのこと好きですか?』
その瞬間、田中先輩が真っ赤になる。やっぱり、府に落ちた感覚と同時に、訊かなければよかった、と後悔した。
「いや、好きっていうか、清子さんは女神だから……天使?かもしんねーけどな」
『そう、ですね……』
なんと話を続ければいいか分からなくて口を閉じ、それきり黙り込む。好きな人に好きな人がいたなんて。叶わない恋じゃない。
好きな人の恋なら、実ってほしい。
でもわたしのことを、選んでほしい。
モヤモヤとした気持ちが胸を渦巻く。きっと神妙な顔をしているであろうわたしに、田中先輩が明るく言った。
「よし、先輩がおごってやろう!」
『え?』
「肉まん、食べるだろ?」
『は、はいっ!』
田中先輩が買ってくれた肉まんを食べながら心に決めた。なんとしても、わたしを好きになってもらおう、と。