Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第3章 ☆黒猫の慧眼:黒尾
それから数ヶ月。宮城まで遠征に行ったり、インハイでは苦い思いをしたり、他校と週末に合宿をしたりと、色々な経験をした。
ぶっ飛んでくるボールにも反応ができたり、灰羽君の扱いに慣れたり、黒尾さんの絡みにも慣れたり。
そんな中での夏休みの合宿。わくわくの期待と同時に、少しの責任も感じていた。
『えぇと、これが持って行く分、予備の分で、それとテーピングとタオルはこっち…』
「天草ー!」
『はい、すぐ行きます』
部室で荷造りをしていると、廊下を走る音と共に黒尾さんの声。慌てて出ると、ぽたぽたと汗を滴らせる黒尾さん。
「わりぃ、タオルってどこだっけ?」
『あーごめんなさい、洗濯中で…私のでよかったらお貸ししますけど…?』
「え、使っていーの?ヤじゃないの?」
『いえ、別に』
「そーか。なら借りようかな」
後ろに置いていたよつば模様のフェイスタオルを渡すと、アザス!と言って黒尾さんはわしわしと顔を拭いた。これだけ拭いても髪型が崩れないから不思議だと思う。
「ふぃー、サンキュな」
『すいません、だいぶ慣れてはきたんですけど、時々忘れてしまって…』
まだまだ未熟なのだ。みんなの力になれていないのかと思うと、どうも気分が落ち込んでしまう。その時、ぽん、と頭に何かが乗った。驚いて顔を上げると、そこには右手を伸ばす黒尾さん。
『く、黒尾さん…?』
「ん、あぁ、ごめん。なんか天草しょんぼりしてんなぁと思って」
『私、ちゃんとチームに貢献できてるでしょうか…時々ミスをすると、そう思います』
「んなに気負うなって。天草のお陰でリエーフのバカもレシーブ練にしっかり時間とれるし、俺らも備品の心配しなくていいし。天草がいるから、今までよりもっと濃い部活ができてるんだぞ?」
主将としての黒尾さんの言葉。その重みと温もりがじんわりと胸に溶けていく。
『ありがとうございます。頑張ります』
「おう。でも体は壊すなよー?」
『私はこう見えてもリベロだったんで、体力とか柔軟性には自信がありますよ』
「頼もしいな」
ははっ、と笑う黒尾さん。つられて私も笑い、ドリンクの入ったカゴを抱えて体育館へと向かった。じーわじーわと、セミがけたたましく鳴いていた。もうすぐ、夏が来る。