Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第2章 立場違えど想いは1つ:京谷
向かった先は国際空港。追ってくる人がいないのを確認すると、手を繋ぎ、国際線のロビーまでを一気に走る。
「星菜、もっと急げよ!」
『走ってるわよ!この脳筋!』
「あぁ"!?」
そんな口論をしながら全力失踪。真っ黒なスーツは動きにくいことこの上ないし、星菜のワンピースも走りにくいだろうし、ワインレッドのそれは目立つ。どこかで着替えるか、いや。今は一分一秒が大事だ。
「次の飛行機…あと20分後の、それでサンフランシスコまで飛ぶからな」
『サンフラ……えぇ!?』
「じゃねーと完全に逃げらんねぇよ!」
『っでも、上手くいくの?』
その質問はヤボだ。
「勝算がなきゃこんなことしねーよ」
『わお、カッコいいねぇ!』
「オレは元々負けず嫌いだし、惚れた女は守り抜くさ。それに共謀者もいるしな」
『え、誰?』
「ま、いずれ分かるよ」
及川のヤツは今頃何をしているだろうか。屋敷の星菜の貴重品類がなくなっていて泡を食ってるところか。アホ面を拝んでやりたい気もするが、それは後だ。
「おい、あと少しだからな」
『わかっ、た、ちょ、疲れっ』
「ヒールがキツいか……よっ!」
『わぁっ!?』
ひょいと星菜を横抱きにする。そして走る。
『け、賢太郎、下ろしてよっ///』
「こっちのが速いからな」
赤面する星菜。土産屋の前を通ると小さな女の子がこっちを指差し、隣の母親に"お姫様と王子様がいる!"と叫んだ。その言葉にオレは吹き出したが、星菜の顔はタコもビックリな赤色になった。
出発ロビーのど真ん中、見慣れた黒スーツが3人、それぞれスーツケースを持っている。
「カッケーことすんなぁ!」
「京谷ーっ、急げーっ!!」
「お嬢ー、無事ですかー!」
『い、岩泉!?花巻、松川も!』
星菜を下ろすと、3人に駆け寄った。その笑顔は本当に嬉しそうで、見ているだけでこっちまで笑顔になりそうだった。
『え、あ、父様は…及川は!?』
「白鳥沢と烏の奴等が動きを止めてる」
『白鳥沢に、か、烏まで!?』
「岩泉さんに頼んだんだ」
『あ、ありがとう!』
こうして黒スーツのデカい男4人に真っ赤なドレスの女という異色の5人組は、無事に飛行機に乗り、日本を離れた。