Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第18章 "好き"の行方は知らぬまま、
3人が宿題の山に向き合ったのを見、例年より1日だけ夏休みが長くて助かった、と、星菜は胸を撫で下ろした。8月31日の今日は幸いな事に土曜日。明日から9月で本来なら新学期だが、日曜日なのである。
必死になってシャーペンを動かす3人を、星菜はベッドに腰掛けて悠々と見下ろし―――それから眉間にシワを寄せた。
『リエーフ、ペン止まってるけど?』
「2次関数ってなんでグラフひん曲がってるんでs」
『ひん曲がってるのはあんたの脳ミソ』
ズバッと言って、それから星菜は灰羽の隣へと腰を下ろす。黒のadidasのペンケースから水色のボールペンを取り出し、プリントに連なる問題に文字と数字をサラサラと書き連ねていく。
そして5分後。灰羽の白紙の宿題の3割を占める数学のプリント全てに、星菜がヒントを記し終えた。
『はい、これで解ける。できなかったら罰ゲーム。1問私に訊く毎に何か奢ること』
「うげっ、それは………」
『つべこべ言わずにハイ、やって!』
渋々プリントに向き合う灰羽。"どうせできないし"と語っていた目の色がガラリと変わり、手のスピードは段々と加速していく。これなら大丈夫、そう思った星菜は満足気に頷くと、孤爪の隣へと移動した。
『研磨は、どう?』
「国語、読書体験記とかメンドクサイ」
『うわぁそれ残したか』
一番面倒臭いと思われる宿題をなぜ最後に残した、と額を抑える星菜。その横で孤爪はチラチラとスマートフォンの画面を確認する。ピコピコと点滅するディスプレイには、ゲームアプリからのイベント情報。
手を伸ばしたい衝動をどうにか抑え、孤爪は星菜のシャツの裾をくいと引いた。
「ねぇ、おれどうしたらいい?」
『えーと、まず本は読んだの?』
「……SAO、なんだけど」
『んー、まぁ頑張ればイケるよ』
その辺にあったルーズリーフに星菜はペンを走らせる。研磨らしい本を選んだなぁ、なんて感想を抱きながら、星菜はコツを書き連ねる。
ありがと、と短く例を言うと、孤爪はまっさらな作文用紙とにらめっこを始めるのだった。
夏休みが終わるまで、あと38時間―――