Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第17章 ★両片想い、実を結ぶ。:白布
魔が差した、と言うのか。それとも、誘惑に負けた、のか。どっちにしろ、つい、ほんの出来心で、してしまった。
倒れた時にでも付いたのか、前髪にホコリがあったのは事実だ。キュ、と目を結び、緊張からか唇もキュ、と結んだ姿は、本当に愛らしかった。それで、体が動いていた。
ちゅ……
『っ!?』
びく、と天草が体を震わせる。ハッと我に返り、慌てて唇を離す。天草を見て、どっと後悔した。
薄い膜の張られた瞳、微かに震える唇、朱に染まった頬、そして俺の胸元に添えられた両手。
ぐらりと、理性が揺らぐ。
『せ、んぱい……///』
「っわ、悪い!嫌だったよな?ごめんな…」
ぱちり、と瞬きした天草。直後にぽろり、と雫がこぼれた。最悪だ。泣かせた。マジでない。過去に戻れるなら自分をぶん殴ってやりたい。
何、やってんだよ……
「ごめん、ほんと、ごめん…」
『違っ、先輩は悪くないんです……っ、わた、しの問題、なんです、っう、く』
嗚咽混じりに天草が言う。天草はちっとも悪くないのに、そんなこと、言わなくていいのに。
『わ、たしがっ、叶わない恋をした、から。白布先輩を、好きになっ、たから、っだ、から……』
耳を、疑った。
天草が俺を好き―――?
「いや、おい、ちょっと待て」
『っは、はぃ?』
「俺のこと、好きなの?いや、あの、自惚れてるとか、そういうんじゃなくて!…その、マジ……?」
ぎゅ、と天草の俺のジャージを握る手に力がこもる。それから『何度も言いません……///』と、少し拗ねたような、照れたような返事が返ってきた。
「その恋、叶うよ」
『へぇ?』
キョトン、として俺を見上げる天草。ゆるく微笑んで、モルハムの前髪を掻き分け、額にそっと唇を落とす。それから背中に手を回し、ぎゅうっと抱きしめる。
「俺も、お前のこと好きだよ」
腕の中、天草が息を呑む。それから遠慮がちな腕が背中に回ってきた。
知らないうちは、気付かなかったうちは、自分の気持ちを理解しきれず、戸惑った。でも知ってしまったから、分かってしまったから。
もう止まらない。