Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第17章 ★両片想い、実を結ぶ。:白布
立ち上がった瞬間、軽く目眩を覚えた。がくっと膝の力が抜け、椅子に足を引っ掛ける。ぐき、と左足が変な方向に捻れ、バランスを崩す。
『わ、っとと、きゃあっ!?』
「天草っ、う、ぉ!」
目の前には白布先輩がいて、その腕に飛び込むようにして、どさりと床に倒れた。
「…ってぇ……おい、大丈夫か!?」
『わたしは平気です。白布先輩こそ…』
「平気だ」
『よかった…』
白布先輩がどこも怪我をしていないようで、ホッと一息つく。それも束の間、状態を把握したわたしは真っ赤になった。
倒れた体勢、つまり白布先輩の上にわたしが乗っているのだ。密着して触れている部分が急に熱を帯びるようで、慌てて上体を跳ね起こす。
『わっ、わたし何してっ!?すぐ避けます!』
「おいっ、また転ぶ…」
ぺしょり。
白布先輩の忠告も虚しく、わたしの体はまた先輩の胸へと倒れ込む。咄嗟に手を突いたものの、右手の真下にたぶん心臓がある。トットットッと少し速めに動く先輩の心臓。ヤバい、先輩でこれならわたしの心臓破裂寸前なんじゃないの。
恥ずかしいやら何やらで、頭がパンクしそうだ。
「ったく、危なっかしいな」
『ごめん、なさい……』
調子に、乗りすぎた。先輩がちょっと優しくしてくれたからって、こうも有頂天になるとは。我ながら、情けない。
白布先輩が、わたしのこと何とも思ってないのなんて、分かりきってることなのに。期待して。バカ。
「俺がいいって言うまで動くなよ」
『はい……』
呆れ返ったような先輩の声。まったく、返す言葉もございません…先輩の上でじっと固まっていると、「よっ」と小さく反動をつけて先輩が上体を起こした。
白布先輩の顔が近くて、危うく後ろに倒れそうになる。まだ"いい"って言われてない、"いい"って言われてない。自分に言い聞かせるように頭で繰り返し、唱える。
「目、瞑って。前髪にホコリ付いてる」
『は、はいっ!』
ぱたり、とまぶたを閉じる。真っ暗になる視界、聴覚だけが頼りの世界で、白布先輩の息遣いと気配を密に感じる。か、体に悪い…
「目に指入ったら危険だから動くなよ」
『はい……』
じっとしていると、顎に手が掛かりクイッと上を向かされた。角度が悪かったかな?と思った刹那、
ちゅ……
唇が、重なった。