Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第2章 立場違えど想いは1つ:京谷
その夜、組長とお嬢、そして側近の部下達のみでの夕食会が開かれた。組長の知り合いがやっている料亭に向かい、晩餐が始まる。
外国とのヤクの交渉の進捗具合や、武器調達やらについて話す。しばらく経って、お嬢がいきなり立ち上がった。
『父様、今日の本題は?』
「本題も何もあるか。今話しているのが…」
『父様。隠し事は、よくありません。私は既に知っているのです。貴方の、考えを』
隠し事?組長の考え?
お嬢の言っていることはオレにはさっぱり分からない。この夕食会の本来の目的は一体どこにあるのだ。思考を巡らせていると、かっかっか、と組長が笑った。
「流石は俺の娘だ。真意を見抜いておった」
『私の情報網、なめないでくださいね』
不敵に笑うお嬢。それからこう言った。
『縁談ですが、私はお断りします』
「縁談ッ!?」
ざわっと、動揺が広がる。オレもまた、そのうちの一人だ。縁談?お嬢が、誰と。
「組にとっても悪い話ではあるまい」
『そうだとは思います。外部との抗争が激しくなる中、内の繋がりを強くするのは大切なことですよ、ですがっ!』
そこで区切り、お嬢は息を吸った。そして右手で一直線に及川を指差し、声を荒げる。
『私は及川という人間が嫌いなのです。悪逆非道で任務の為にはどこまでも冷酷、挙げ句の果てに失敗を犯した部下を殺すなん…』
「あっはっはっはっはっ、はははははっ!」
お嬢の言葉を遮るように、及川の笑い声が重なった。お嬢は目を怒らせ、不快感を露にしているが、及川は目もくれない。
「いやぁ組長、本当にいい娘さんです」
『私は反対だ。白鳥沢からノコノコ移ってきたコイツとっ、政略結婚なんてっ!』
「こら、星菜。未来の伴侶に何を言っているんだ。高飛車な態度と口を慎め」
『ふざけなるなっ!!』
バンッと、お嬢が机を叩く。水を打ったようにシンとなり、お嬢の荒い息遣いが響く。
『私は、及川なんかとは、結婚しないっ!』
「お嬢っ!」
ガタンッとイスを転がし、颯爽と部屋を出ていくお嬢。慌ててその背中を追う。部屋を出る時、お辞儀をすると、顔を上げた時に及川と目がバッチリ合った。ニヤリと笑う及川。
"忠犬ちゃん"
及川の声が脳裏を過る。それを頭から振り払って、お嬢を追った。