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Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》

第2章  立場違えど想いは1つ:京谷




【京谷 side】


お嬢と、久し振りに剣を交えた。

しばらくやっていない、と言っていたが、その腕は濁っておらず、手を抜いたら一本でも二本でも取られていただろう。


『隙アリッ!!』


面の警戒を怠った隙を突いて剣を振りかぶるお嬢。その覇気に、一瞬でも気圧されたのは事実だ。だが面の奥のその目には、その剣には、ほんの少しの迷いがあった。


「甘いッ!」


そう言って、グッと踏み込む。強く、ここを決めるという明確な思いとイメージを持って。バシッ、と竹刀の音がした。オレの竹刀が、お嬢の面を打った音だった。

その後、朝食までを縁側に座ってのんびりと過ごした。冬の空は蒼くて、澄み渡っていて、お嬢の凛とした雰囲気によく似ていた。

他愛の無い話をしていたからか。オレは気付くことができなかった。お嬢の目に、悲しみが浮かんでいたことなど。



そうして打ち合った後、シャワーを浴びた。汗をかいた後のシャワーはとても気持ちがいい。浴場から出ると、運悪く幹部が通ったところだった。


「あれ、狂犬ちゃん!」


オレをそう呼ぶのは一人しかいない。組のトップクラス、組長の直属の部下、及川徹。


「どうも…」

「星菜ちゃんと打ち合いしたんだって?」

「お嬢が、それをお望みだったので」


そう答えると、あっはっはと及川は笑った。


「いやー、見事なまでの忠犬だね」

「何を言いたい」

「いや別に」


くふくふと笑いながら、及川は言った。ああ、オレはこの男が、心底、嫌いだ。


「でもいずれ、分かるよ。俺が何を言いたかったのかも、星菜がお前に剣の打ち合いを頼んだ理由も、ね」

「ああ"?」

「じゃあ、忠犬ちゃんがいつ牙を剥くのか楽しみにしてるからね~」


そう残し、ヒラヒラと手を振って及川はいずこへと去っていった。


「クソッ、何なんだよ……」


剣を交えてスッキリしたはずなのに、むしろ心の中はモヤモヤとしていた。


   
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