Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第17章 ★両片想い、実を結ぶ。:白布
トスの手応えが今一つで、今日はいつもより長めに自主練をした。川西や天童さんと合わせる時も、牛島さんと合わせる時も、いつものようにしっくりこなかった。
「なんか、ヘンだな……」
特別大きな違和感があるわけではない。ただなんとなく、変な感覚がある。例えば、パズルのピースが1つだけ無いような、歯車が1つだけ欠けてるような。
なんっか、むしゃくしゃしてんなぁ。ふと手に目を落とせば、天草が巻いてくれたテーピング。手にも馴染んできたのか、異物感は無い。じっと手を見ていると、脳裏にあっけらかんとしたモルハムの笑顔。
「犯人はお前かよ……」
ちょこまか走り回って、けらけら笑って、失敗したら落ち込んで。目まぐるしく表情を変える天草を、いつの間にか俺は気にしてたんだ。
「あー、クソっ!」
軽く上げたボールをそのまま打つ。あ、いい感じのコースだ。と、思ったらボールの行方に人影。モルハムだ。
「避けろ!」
『え、キャッ!?』
バチッ、と肌を打つ音がした。悲鳴を上げ、その場に蹲る天草。慌てて駆け寄ると、ボールが直撃したのか右腕がうっすら赤くなっていた。放っておいたら悪化する。そう思った俺は天草の手を取って立ち上がった。
『し、白布先輩っ!?』
「保健室、冷やしに行くぞ」
『ひ、1人でいいです!』
「俺のせいだろ?ならついてく」
こんなの建て前だ。本当は、天草といたいだけ。少し自覚した感情が本物か、確かめたいだけだ。
それからパチリ、と瞬きをし、困ったようにへらりとモルハムは笑った。瞬間、察した。あーコイツ、俺といたくねぇんだな。そりゃそうだよな、普段から冷たくドライに接してるし、向こうから来てもあんま話さねぇし。
なんだ。自業自得か。
「ほら、早く」
『はいっ』
手をぐっと引くと、パタパタと早足になる天草。せめて今だけは、天草の意識が俺にいきますように。なんて、柄にも無いことを願いつつ、天草の温もりを感じながら保健室へと歩いた。
一瞬、ほんの一瞬だけ、天草が俺の手を握り返した気がした。