Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第16章 ★嫉妬心:瀬見
白布のトス練習を続けること30分。涼しくなってきたので窓を閉めに向かうと、どんよりとした雲が空を覆っていた。今にも降ってきそうな気配である。
『白布、たしか家遠かったよね?』
「バスト徒歩ですけど……?」
『いやね、雨降りそうだから帰るなら早いほうがいいんじゃないかな、って思ったんだけど』
「ほんとですか?」
ボールをカゴに戻し、窓に駆け寄る白布。それから空を見上げ、「うわ、降りそう…」と顔をしかめた。
『帰っていいよ?私も瀬見も、家は近いから』
「なら……」
バッと頭を下げて「すみません、お願いします」と言い、荷物をまとめると、白布は慌ただしく去っていった。その背中を見送って、体育館に散らばるボールを回収する。それを器具室に戻しに向かい、所定の位置に戻す。
ガラガラ、パチッ、カチャン―――
フッ、と電気が消えて視界がブラックアウトする。ビクッと肩を震わせ、耳を澄ませる。コツ、コツ、と靴底が床に触れる音がして、やがてそれは目の前で止まった。
ふわり、と、柔軟剤と少しの汗の匂いが香る。
『……せ、み?』
ようやく暗さに慣れた目が捉えたのは、瀬見の腕がこちらに伸びてくる様子。『あっ』、と小さく呟いた時には、瀬見の腕の中にすっぽりと収まっていた。
『どう、したの?』
「……俺らさ、付き合ってん、だよな?」
何を急に、聞いてくるの。そう言い掛けて、やめた。暗がりの中にうっすらと見える瀬見の顔は、何かを堪えるようで、悲しそうに見えた。
『なんで、そんな顔してるの?』
「天草、自覚ないじゃん?だから見てるこっちは色々複雑なんだよ。わかる?」
『……………………分かんない、です………』
たっぷり間を取って考えたけど、ちっとも分からない。ふぅ、と瀬見がため息を吐き、私の背に回していた腕を緩める。それからそっと、私の右手を取ってギュッと握った。
「さっき、この手で何触ってた?」
『何、って。そんなの、ボールに決まっ…』
違う。そんなありきたりの答えじゃない。
瀬見が言いたいのは、きっと、
『私っ、白布の手、握ってた……?』
「そ。わかってるじゃん」
彼氏が、瀬見がいる前で、私はなんて軽率なことをしてしまったのだろうか。謝らないと、と口を開こうとした刹那、それは塞がれた。