Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第16章 ★嫉妬心:瀬見
付き合い始めて1年が経った、高校3年の夏。3年生の集大成でもある春高へ向けての練習は熱を増すばかりだった。
『今日はこれで終わりですが、8時までなら自主練できます。最後の人はカギを忘れないでください』
「アッす!」
五色は白布を練習にしつこく誘っているし、牛島は周りに目もくれずサーブ練、瀬見と大平、天童はトスの調整をしているようだ。
それから成り行きで、1時間ほど3対3をやった。そして7時過ぎ、天童と牛島、大平と五色が寮の門限があるからと帰っていった。残ったのは、自宅通いの瀬見と白布、私だけとなった。
『2人は残ってくの?』
「おう。俺はサーブやってるわ」
「天草さん、ボール出してもらえますか」
『うん』
チラ、と瀬見を窺うと、特に気にした風もなく、エンドラインに向かっている。ボールの入ったカゴを運び、白布にパスを出す。予め置かれたペットボトルを目安に、クイックの位置を確認しているようだ。
だがペットボトルに当てるのはなかなか難しく、白布の表情は時折悔しそうだ。
『白布、ちょい肩の力抜こっか』
「っ、はい。あの…」
『ん?』
「天草さん、セッターだったんですよね。精度を上げるコツとかって、ありますか」
思っても見ない質問に、『そんなの白布の方が知ってるんじゃない?』と言いそうになった。これでも中学ではセッターだった。何かしらアドバイスできるかもしれないと思い、ボールを手に白布の隣へ向かう。
『ボールに触るのって、一瞬でしょ。だから、なんていうのかな…優しく、触ってみたらどうかな?』
「優しく……?」
『そう。上手く言えないんだけど、こう、包み込むというか。クイックだとスピードも大事なんだけど、だからこそ丁寧に心掛けるというか…ちょっとごめん』
「え……っ!?」
ボールを持つ白布の手に、自分の手を重ねる。少し上に持ち上げ、白布が指先だけでボールに触れるようにした。
『トスは基本、オーバー。神経は使うけど、ボールに触れてるこの指先に意識を集中させてみたらどうかな?』
「はいっ、やってみます///」
朗らかに返事をする白布の頬が、ほんのりと赤い。不思議に思いつつも、練習を続けた。その光景を、瀬見がじっと見てたことなど知らずに。