Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第15章 鈍感少女の青春記録Ⅲ《青城》
ネコの声に、ぐるっと首を捻る。そこにはさっき案内してくれたあの三毛ネコの姿。そしてそれを追うようにして、矢巾さんと渡さんが駆けて来た。
「星菜っ!?」
「大丈夫か!」
『矢巾さんっ、渡さんっ!』
無言で私の上から退ける京谷さん。2人は私を背中に庇うように前に立つと、京谷さんに言った。
「お前、俺らのマネージャーに何した!?」
『まだされてない、です……』
矢巾さんの背中をキュっと引き、そう言う。振り返った矢巾さんは「でも…っ」と不満そうだったけど、私が首を横に振ると諦めたようだった。
「京谷、戻ってこいよ。星菜はわざわざ来たんだぞ?会ってもいない、お前のために。たかが一部員のためにフツーここまでしないからな!?」
珍しく声を荒げる渡さん。京谷さんは罰が悪そうに頭を掻き、視線を逸した。
どうしてだろう。何もないのに、目の前にそびえ立つ壁が見える。京谷さんと私達を隔てるそれは、どうすることもできないのだろうか。
そんな孤独な1匹のオオカミに、ネコが擦り寄る。三毛ネコちゃんは「みゃあ」と鳴き、それから器用に爪を引っ掛け京谷さんによじ登り、頬をペロッと舐めた。
まるで「いってきなよ」とでも言うように。
『京谷さん、私京谷さんのバレー見たいです』
「俺もお前にトス上げたいから戻って来い」
「練習、付き合うからさ」
じっと足元を見詰め、俯いたままの京谷さん。おもむろに顔を上げると、こう言った。
「お前らが何でここまですんのか、わかんねぇ。でもそこの女に言われたこと、ムカついた。だから明日は、行ってやるよ。明日だけだかんな!」
そうして、肩にネコを載せたまま、京谷さんは空き地から出て行った。ぽけーっとそれを見ていると、コツっと頭を小突かれた。
『ちょ、矢巾さん!?』
「ったく、心配掛けさせやがって!やっぱりお前、言った通りヤられそうになってたじゃねーか!?」
『っそれは、その……でも何もなかったです!』
「矢巾、その辺にしとけって」
苦笑しながら渡さんが言う。そうだ、私この2人に心配掛けちゃったんだ。
『ごめんなさい……』
「もういいよ。ほら、帰るぞ」
「行こうか」
『っはい!』
歩き出した2人の背中を、追う。明日は京谷さん、部活に来てくれるかな、なんて。ちょっとだけ、期待してみたりして。
